「HelloTalk(ハロートーク)」は150言語が学べる世界最大の多言語学習コミュニティーアプリケーションだ。現在、世界200カ国で利用されており、ユーザー数は1300万人を超えている。そのうち日本人は13%強、アクティブユーザー数では最多で、確実にファンを増やしており、私もその1人である。
世界中の人たちをオンラインで繋ぎ、ともに語学学習できるというこのアプリは、2013年に中国の深センで誕生した。
創業者のZackery Ngai CEOは、中国で生まれ、香港で育った。アメリカと韓国への留学経験があり、また日本文化への関心も高く、日本語学習にも意欲的。北京語、広東語、英語、韓国語、日本語を話す、まさにマルチリンガルだ。
「僕は昔から言語学習が好きでした。日本語への興味も強かったので、韓国に留学していた時に、日本語のエクスチェンジパートナーを探しましたが、なかなか見つけることができませんでした。それで、オンラインで世界を繋ぎ、世界中の人たちが言語学習で助け合い、楽しく交流しながら学習できる、新たなコミュニティーを開発しようと思ったのです」
コミュニケーションの場でもある
ハロートークは、利用してみるとよくわかるが、よくできている。例えば、私が中国語を録音して、その音声をこのアプリで繋がる「友だち」に送ると、正しい発音で送り返してくれる。また、その音声を瞬時に文字化もしてくれる。
そして、ハード面はもちろん、ソフト面のクオリティの高さに、ユーザー同士の愛さえも感じる。昨年は世界の主要60都市で、ユーザーが集い、対面して交流を楽しむミートアップイベントも開催された。日本でも東京、横浜、大阪の3会場で催され、大盛況だった。
「重要なのは、ユーザー同士が友だちとなり、良質なコミュニティーをつくり上げてくれることです。異なる言語を学び合うということは、同時にその文化と習慣も互いに学び、『理解し合い、助け合う』ということです。そのビジョンをユーザーに理解してもらい、自分たち自身でモラルをつくりあげてくれるよう努力してきました」
Zackery氏がハロートークに託すのは、単なる語学学習のアプリとしてではなく、もっと高い志、世界中の人と人のコミュニケーションの場でありたいという思いだ。
「日本人のユーザーにはとくに感謝しています。実は、ハロートークで、英語の次に人気のある学習言語は日本語であり、日本の皆さんがとても素晴らしい対応をしてくれるので、対するユーザーもマナーがとても良い。相乗効果が生まれています。桜のシーズンには、世界中からお花見の投稿が、日本語でアップされていました」
現在、Zackery氏の仕事をサポートしているTwiggyさんも、元はハロートークのユーザーだった。
「4年ほど前からユーザーとして、日本語を勉強していました。このコミュニティが大好きなので、自ら応募しました。私のように、ユーザーから始まって、ここで働きたいという人は多いのです」
とはいえ、中国のスタートアップでは、新人を育てるという環境が、あまり整っているとは言えない。中国では「人材」のことを「人才」と書くが、「才」は、もちろん「才能」の「才」だ。ハロートークには、この人才を育てる社風があるという。
Twiggyさんも、応募時点では未経験でポジションがなかったが、今は言語学習コンテンツの運営を任されている。
「効率的で、つねに新しいことを習得できているという実感があり、また、社内パーティー等のチームビルディングイベントも盛んで、毎日が楽しいです」
他にも、Twiggyさんたちと一緒に働く「仲間」が世界中にいる。各国にいるマーケターはリモートワークが可能なのだ。その多国籍な仲間たちも、年に数回は深センに集まり、交流を深めている。
世界一の言語改善アプリを提供するのが夢
そんな素晴らしいコミュニティをつくり、進化し続けるハロートークが、新たなアプリを開発した。「English Grammar Checker」というものだ。
このアプリケーションは、名前からして、英文のミスタイプをチェックするものを想像してしまうが、それだけではない。
アプリで繋がるコミュニティ内では、日々、リアルな言語交流がおこなわれ、各言語のネイティブが正しい文章を教え合っているし、プロの語学教師からのアドバイスも多数ある。どの文法が間違いやすいのか、どのように改善すれば美しいのか、という無数のデータが日々アップデートされている。
その独自のデータとAIが協業し、複雑な文法ミスも、瞬時にネイティブ並みの表現に正してくれるという画期的な言語改善アプリだ。その精度の高さは世界トップクラスだと、実証結果も物語っている。
「このアプリは一般の方も利用可能で、まず英語版から発売し、さらに日本語版、中国語版と開発していく予定です。僕自身もハロートークのユーザーの1人であり、コミュニティの皆さんと一緒に築き上げた財産を、今後はより多くの方たちに活用してもらいたい。すべての人たちに世界一の言語改善アプリケーションを提供する、それが僕たちの新しい夢です」
Zackery Ngai CEO
そう力強く語るZackery氏は、外見からは年齢より若く見えるが、すでに40代。成熟した大人で、堅実な経営者でもある彼は、20代から30代の起業家が中心の深センでは、貴重な存在だ。もちろん若い人たちの勢いは素晴らしい。その反面、継続的に事業を発展させるという、更なる課題に直面している若手起業家は少なくない。
その中にあって、Zackery氏は、世界へと展開しながらも、本社スタッフは50名ほどで効率よく事業を運営している。ここ深センにおけるスタートアップのトップランナーとして、また長期的な視野で社会貢献性を追求する起業家として、注目を集めていくにちがいない。