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突然だが、私は映画「アベンチャーズ」のなかでは、アイアンマンのファンだ。なかでも、アイアンマンことトニー・スタークを助ける、優しい秘書ロボットのような存在がいてくれたら……と考えていたが、まさか、そんな世界が実現するなどとは思いもしなかった。

そんな夢の世界が本当に実現するのだと確信に変わったのは、AI+IoTのプラットフォームのパイオニアである「Tuya Smart(ツヤスマート)」という企業に出会ってからだ。彼らは、杭州と「人才中心都市」深センを繋ぎ、世界を舞台に新たな挑戦を展開している。

AI+IoTとは、単に生活が便利になるだけの技術ではない。Tuya Smartが目指しているのはその先にある「モノが人の心に寄り添い、ともにより良い社会を創っていく」という新しい未来だ。

Tuya Smartは、2014年にアリババ出身の創業者たちによって杭州で誕生し、既に世界200カ国でビジネスを展開している。本社は杭州と米国に置かれ、中国、ヨーロッパ、インド、(ソフトバンクと提携して)日本でも展開。今年は本格的拠点が日本に設立された。世界計8拠点のスタッフは1100人を超えている。

同社の特徴は、AIとIoTの技術を融合させ、すべてを取り巻くプラットフォームを形成していること。全世界の電化製品に対応可能で、3万種類あるモジュールを付ければ、即座にスマート家電となる。そして、1つのアプリケーションで操作が可能だ。

そのためのクラウド、各種プロダクト、カスタマーサービス、サプライチェーン、ロジスティックに至るまで完備され、どの工程においても世界中のサプライヤーと提携が可能だ。このような柔軟性の高い総合的モデルは他に例をみない。

AI+IoT市場は20年間成長し続ける

そのTuya Smartが開催するカンファレンスに参加した。「新たな市場を開拓するための新技術」というテーマで、世界中から深センに集まったゲストは5000人以上。政府関係者、ヨーロッパ、米国、南米、インド、韓国、そして日本からもソフトバンクや共同で家電を製造しているメーカーのトップが、メインゲストとして参加していた。

このカンファレンスで、Tuya Smart創業者の1人で、COOでもあるAlex Yangさんの単独取材が叶った。米国人ディレクターのスピーチも素敵だが、Yangさんの英語でのプレゼンテーションも、聴衆を魅了するほど素晴らしかった。

Yangさんによれば、AI+IoT市場は急速に伸びており、2年後には彼らのユーザー数も100万人に達し、売上は1兆円を超えると推測している。しかも、まだまだ未開拓な分野でもあり、今後20年間は成長し続ける市場だと予測されているという。

まもなく日本でもスタートする5Gは、4Gの100倍以上の速さになる。その時には、AI+IoT×全ての電化製品×5Gの相乗効果で、新しい未来が始まるという。そのために膨大な数の技術革新に取り組んでいるが、彼らが実現しようとしている社会に紐づけながら、具体例を伝えておきたい。 特徴的な技術の1つが、人間のエモーショナルニーズを察知し、その心に寄り添い、パーソナルサポーターとしてモノが自動対応してくれる技術だ。

具体的には、AIの顔認証や声認証技術を強化し、顔色や声色でその時々の感情や欲求を察知し学習しながら、対応パターンを臨機応変に選択し、「かゆい所に手が届く」自動対応をしてくれるというものだ。

例えば、疲れている時は癒しの照明を照らし、暖かい空調を整え、心地良い温度のお湯を風呂に入れてくれる。パートナーへの愛情を表現したい時には、ムードのある照明に素敵な音楽をかけてくれ、リラックス効果のあるお茶を出してくれる。

その技術がReTech(リアルエステート×テック)で、不動産に応用され、自宅、集合住宅、ホテル、病院、セキュリティー、シェアリングなどとも連鎖しながら、社会全体がスマートソサイティ化していくという。

なかでもセキュリティーについては、自宅にいるペットを外部からいつでも確認でき、また不審を察知した際は自宅側から知らせてくれるというような双方向タイプが人気だ。また、気の利いた機能例としては、冷蔵庫が各食材の賞味期限を知らせてくれたり、冷蔵庫内の食材でレシピも提案くれたりもするようになる。

ローカライゼーションを重視

Tuya Smartは世界展開を進めるなかで、各国の法律や規制に対応し、それぞれの生活習慣に寄り添うローカライゼーションをとくに重視している。これは、ユーザーの日々の生活に密着しているIoTならではの、最もチャレンジングな要素ではないだろうか。

例えば、Yangさんは米国に留学し、カリフォルニアに住んでいた。そこでは庭の草花に定期的に水をやらなければ罰金が生じ、逆に水をやり過ぎても罰金を取られた。その時、このストレスを解決してくれる「スマート水まき家電」を強く求めていたそうだ。

そういった現地ならではのニーズ、ストレス、社会的課題の解決につなげ、より良い社会づくりに貢献したいというのが、彼らが実現をめざしているビジョンだ。

では、日本の社会で考えた場合は、どのようなことが期待できるだろうか。まず浮かんだのは、高齢化社会、過疎化、核家族の不便さや不安の解消、そして孤独感やプレッシャーを和らげたいということだ。地方の1人暮らしのお年寄りも快適で安心して生活ができる、1人で留守番をする子供の宿題を一緒にサポートしてくれる、そして3世帯同居の場合も世代別個人別の自動対応が可能になる。

ただし、Tuya Smartの技術のみでは、それらは実現できない。日本でのIoT認知率はまだ8%に過ぎないのだが、日本側がどこまで受け入れて、共存していくのか、受け入れるほうの態勢が重要ではないだろうか。

最後に、Yangさんがこう打ち明けてくれた。

「些細なことかもしれないけど、ぐっすり眠れる機能が僕のお気に入りなんだ。スリーピングモニターで、快適な眠りと目覚めの良い朝を演出してくれる。徐々にライトを弱めたり、朝はカーテンを少しずつ開けて、好みの音楽をかけてくれたりする。僕らは、世界に追いつかなければならないというプレッシャーをいつも背負ってきた。そのせいか眠りが浅くて、僕自身も優しいサポートを求めているんだ」

IT界の超エリートである彼が、ふと漏らしてくれた本音に、少し安心感を覚えた。

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モノが心に寄り添う、より良い社会 杭州発AI+IoTパイオニアの挑戦

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