中国上場企業の⼥性役員率増加 1社平均1.39⼈ 報酬も向上
中国の⼥性のキャリアに関する⼀例として、具体的なデータに基づいてお話しします。
中国南開⼤学中国公司治理(コーポレートガバナンス)研究院が発表した「2021年中国上場企業の⼥性役員特別報告」によると、中国では2012〜21年の間で⼥性役員のいる上場企業は増加し続けており、21年は上昇幅が最⼤となりました。
中国の上場企業全4134社のうち、⼥性の役員がいる企業は10年間で1079社から3150社に増え、⼥性役員のいる上場企業の⽐率は76.2%、1社当たりの⼥性役員は平均1.39⼈になりました。⽇本でいう会⻑職に⼥性が就く企業は76社から241社に増えており、多様性が⼤きく改善されているようです。
なお、会⻑職のうち報酬が⽀払われているのは⼥性が85.0%、男性が81.6%。その平均報酬は⼥性が115万5400元(約2千265万円)、男性が120万400元(約2千360万円)とのことです(1元19.6円換算)。
また、シティバンク中国は、⼥性役員の割合が5割に達したと発表しました。現在の中国本⼟エリアのCEOと⾹港エリアのCEOも、共に⼥性です。
中国企業で⼥性が活躍している背景には、「⼥性はそこそこでいい」という発想が皆無という点があると考えられます。
⼀⼈っ⼦政策があったため、⼀⼈っ⼦の⼥性も多く、⺟⽅と⽗⽅両家の愛情を⼀⾝に受けると同時に、期待も1⼈で背負うことになります。中国では家族の絆や家系の繁栄が特に⼤切にされていると感じますが、⼀⼈っ⼦政策の場合、跡継ぎはその⼥性1⼈だけというわけです。
もちろん、⾃分⾃⾝にオーナーシップを持ち、⾃⼰実現していくという⾃発的動機も強いと思います。しかし、家族が誇れる娘であるために社会で必死に頑張り、かつ⼦孫繁栄のために⼦どもも産み育てなくてはいけないという葛藤の中で精いっぱい⽣きている、それが私の知る彼⼥たちの姿です。
前述の報告書で注⽬したのは、役員の学歴に関する記述です。
修⼠号以上の学歴を持つ⼥性役員の割合は58.7%、⼥性の会⻑職では55.2%と、半数以上が修⼠号以上を持つ実態が⽰されています。にもかかわらず、男性の⽐率を⼤きく下回ったことを指摘する記述もあり、「⼥性はもっと頑張らなければいけない」というメッセージを感じました。
こうした背景には、今の中国の都市部では、⾼学歴が当たり前となっていることがあります。
「学歴競争を勝ち抜かずして、よい未来など始まらない」と⾔っても過⾔ではないほどすさまじい競争が存在します。
続きは来週公開予定です。バックナンバーも是非ご一読下さい。
中国の⼤都市における「リアルなキャリア事情」 Vo.1 | Diverse Design K.K.
取材・⽂/藤井薫 写真/⽐屋根悠亮