すさまじい学歴競争に勝ち抜くための教育事情
なぜ、学歴競争がそれほど激しいのでしょうか。理由は、「どの⼤学出⾝か」で就職先の選択肢が明らかに違うからです。
中国の⼤学進学率は50%を超え、21年の⼤卒者は909万⼈にまで増加しているといいます。企業数は増えていますが、急増する⼤卒者の受け⽫としては追い付いていないですし、そもそもスタートアップ企業などでは即戦⼒の中途採⽤を重視します。
また、いろいろな⼈が交じり合う環境だと基準がブレやすいため、中国に限らず、新卒採⽤時も中途採⽤時もまずは、学歴やスキルなどの明確な判断基準を重視します。もちろん、⼀緒に働きたいと思わせる⼈間性も重視されますが、⺟数が多いとバランスの取れた⼈が選べる確率が⾼くなります。だから、新卒時に限らず、常に学び続けてスキルアップする必要があるのです。
学歴競争の象徴ともいえるのが、「⾼考(ガオカオ)」ではないでしょうか。
⽇本の⼤学⼊学共通テストのようなもので、規定はとても複雑です。詳細は省きますが、「高考の点数で⼤学が決まる=将来が決まる」といわれ、全国の受験⽣が⼈⽣をかけて試験に挑みます。
たとえば、トップクラスの清華⼤学や北京⼤学の場合、21年は合計で6500⼈ほどの学⽣が合格していますが、21年における⾼考の受験者数は1078万⼈で、二⼤学への進学率はたったの0.0006%という超難関です。
そのため、まだ夜も明けぬうちに学校へ⾏き、毎⽇14時間以上勉強している中学⽣もいると聞きます。近年は中国政府によって学習塾への規制が強化されるなど、教育の負担軽減を試みがなされていますが、もともとの次元が違うと思います。
北京の名⾨校に通っている知り合いの⼥⼦中学⽣は、「今まで毎朝5時から授業開始だったけれど、最近朝6時半開始になったため、6時間ほど寝られるようになった」と話していました。
確かに都市部の⼈たちは、幼少期からよく勉強していると思います。⼩学⽣のうちから習い事に通っているのは⽇本の⼦どもたちと同じですが、中国の都市部の親が意識しているのが「競争に勝ち抜けるか?」ということと同時に、「どうやって差別化できるのか?」ということだと感じます。
たとえば、英語は幼稚園から必須科⽬なので当然勉強しますが、同時に「第三⾔語は何を習わせるべきか」ということも考えます。⽇本語を学習する⼈の数は中国が世界で1位ですが、⽇本語学校の関係者からは「学習者の割合が低年齢化しているのでは」という意⾒があります。
「⽇本語は⾼考の選択科⽬でもあるし、将来⽇本に留学して働くこともできる、差別化できるのでは」と親は考え、⼦ども⾃⾝も⽇本のアニメなどを通して⽇本に興味があるため、⼩学⽣から⽇本語を勉強し始めるケースもあると聞きました。こうしたことから、⼦どもの海外留学や海外移住に積極的な家族が多いのだとも思います。
中国のネット検索最⼤⼿の百度(バイドゥ)が発表したデータによると、中国で⼦ども1⼈を18歳まで育てるには、2019年の時点で平均48万5218元(約951万円)の費⽤がかかります。中国の1⼈当たりのGDPの6.9倍、1⼈当たりのGDP⽐率は調査対象国の中で2位となっています。
中国の中でも上海では平均は102万6412元(約2千12万円)、北京では96万8642元(約1千899万円)と、⼆⼤都市での教育に対する投資事情がよく分かります(1元19.6円換算)。
続きは来週公開予定です。バックナンバーも是非ご一読下さい。
中国の⼤都市における「リアルなキャリア事情」 Vo.2 | Diverse Design K.K.
取材・⽂/藤井薫 写真/⽐屋根悠亮